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ビル・エヴァンス~美しき破壊と創造~

2009年04月01日 23:12

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。

あー、依頼がきました。依頼。(今日は4/1だが嘘ではない。)

依頼内容は「ピアノにおけるコード・ヴォイシングを用いた八小節分のフレーズを作れ」です。

コード・ヴォイシングっつーのはですね、ほれ、Cメジャーのコードならドミソとかゆー和音の音を組み建て直すことです。

んで、組み立てなおしたもんを別のコードに、力学的に無理なく移行するもんを八小節作れと。

てめーで好き勝手やる分には「んー、テキトーに」ですが、具体的に条件を提示されたからには、脳みその海馬をほじくり返してやらなあかんと思うのです。

いや、ヴォイシングっつっても、ギターで言えば初心者が覚える「回転コード」っつーのもそーですが、ネタがエレクトロニカっつーかユーロ・プログレッシヴ・ロックみてーなもんなんで、それに見合ったもんを考えねーといかんな、と。



 僕ぁ、ホルンとトロンボーン以外の金管楽器を吹けましたが、それ以外はなんも素養がねー状態で十代後半に作曲・編曲を学ぼうと志しました。(ホントは働きたくない故の言い訳。)

が、和音楽器を弾けねーだけじゃなく和音に対しての耐性が皆無でした。

いやね、耳で聴けば「ああ、これのことか」と理解できるんですが、理屈だけで組み立てることができねーっつー。楽典(音楽理論のメソッド。)が頭に入っててもです。

そんなときにですね、ヒジョーに勇気づけられた出会いがありました。

マイルス・デイビスです。



 何名か、んで何作かは聴いたことがありますが、ジャズは三十路の今も造詣が深くならねー音楽です。

そんな僕がなんでマイルス・デイビスに勇気づけられたかっつーとですね、彼のモード(教会旋法のことだが、モード期のマイルスについては調性が薄いことを指すようだ。)時代からエレクトリック(ジャズにエレキギターだけではなく、ドラムにロックのビートを叩かせた。)時代の緒作品を聴いてです。

勿論、激しいコード展開を経ての新機軸なわけですから、100%テケトーにやってたわけじゃねーです。

それでもですね、ドって音があったら、それを基に自由な発想の展開を繰り広げても全然オッケーっつー考え方に勇気づけられたわけです。



 マイルス・デイビスっつーと、最初に買っちゃうのが「ジャズの歴史を変えた」と言われる『カインド・オブ・ブルー』じゃねーかと思うんですが、僕ぁあんま好きじゃねーです。その前の『マイル・ストーン』のが好きです。

が、『カインド・オブ・ブルー』において、マイルス・デイビスが見いだした稀代のミューズィッシャンの一人が参加しとります。ビル・エヴァンスです。(ピアノの方な。)

今もそーかも知らんですが、当時の人種差別っつーのはしどいもんだったそーで、ジャズ・メッセンジャーズのアート・ブレイキーが来日したときにですね、ファンがミューズィッシャンに対して、その演奏に敬意を表して接してくれたことに「こんなことは初めてだ!」と感動したっつーエピソードがあります。

で、ビル・エヴァンスは白人です。自分以外は社会的マイノリティですがバンドの中じゃ自分が一人っ子です。

なわけで、ビル・エヴァンスは短期間しか在籍してねーです。

人種の違いだけじゃなく、チャールズ・ブコウスキーがラブ・アンド・ピースに中指立ててたときに「柔なヤクやって喜んでクールだと思っている奴らより、生死をかけたヤクをキメて限界に挑んでいるジャズメンの方がクールだ」みてーな皮肉を書いてたよーに、他のメンバーがハード・ドラッグの常習者でそりが合わなかったからっつー説もありますが。(皮肉な話だが、ビル・エヴァンスは晩年ハード・ドラッグ常習者になってしまった。)



 ビル・エヴァンスのプレイってスカしてます。所謂「ジャズですねー」っつー雰囲気です。優しげだけど華があるっつー。

でも、その「ジャズですねー」を最初にやったのが彼だとしたら、これも歴史を変えた一つかと。

僕が彼の作品で衝撃を受けたのは、編曲の講義で分析させられたT.T.T(Twelve Tone Tune)っつー曲です。

題名のとーりですが、半音毎に1オクターブの12音を使ったフレーズの曲です。一回使った音は同じフレーズ内で二回使っちゃダミっつールールがあります。

アルノルト・シェーンベルクが発案したもんですが、前衛的なもんを「ジャズですねー」っつーピアノ・プレイに取り入れて大衆音楽でも有効であることを示したビル・エヴァンスってすげーなと思うのです。

他に12音音楽を大衆音楽に持ち込んだのはフランク・ザッパや、その門下生であるスティーヴ・ヴァイがいますが、ごくごく自然な感じでやってのけたビル・エヴァンスに衝撃を受けたもんです。

んなわけで、僕もチンポ以外は枯れ始めてくる年頃なんで、去年から再び音楽やる機会が巡ってきたんだから、そーゆーもんに改めて夢中になりてーなーと。



 このT.T.T、収録されてるアルバムが見つけられずにいましたが、どーも廃盤みてーですね。



T.T.T/Bill Evans




 ビル・エヴァンスの晩年は、よくある「ロックにおける悲劇のカリスマ」よりとってもです。今日のお題じゃねーですが『EVANS~美しき破壊と創造~』なんてタイトルの映画があってもおかしくねーよーな。

ハード・ドラッグで心身ボロボロになりながら演奏を続けるも、内縁の妻が自殺。んで、再起をはかった矢先、幼少期に共に音楽を学んできた兄も自殺。失意のどん底にありながら、周囲の説得も聞かず演奏をやめずにですね、最期はヘロインやコカインでボロボロになった肝臓や出血性腫瘍が元で失血死です。

こんな最期だと、さも激しい音楽をやってたんじゃねーかと思いますが、先述のとーり彼のピアノは優しげで華がある美しいもんです。

ちょい前にバラードを集めた『プレイズ・フォー・ラヴァーズ』っつーコンピレーション・アルバムもあるんで、ぜひぜひ手に取ってもらいてーもんです。

そうそう、なんでビル・エヴァンスの話になったかっつーと、彼のコード・ヴォイシングが感嘆しちまうくれー練られてるからです。
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