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ホントに隠れた名盤だと思う、ルー・リードの『セット・ザ・トワイライト・リーリング』

2011年01月17日 10:37

album-set-the-twilight-reeling.jpg『Set The Twilight Reeling』
(1996年リリース)

1.Egg Cream
2.NYC Man
3.Finish Line
4.Trade In
5.Hang On To Your Emotions
6.Sex With Your Parents
7.Hooky Wooky
8.The Proposition
9.Adventurer
10.Riptide
11.Set The Twilight Reeling



【このアルバムを一言で語るなら「帯のコピーに偽りあり」】

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あーあ、ハマリだしたら止まらないもんで、通勤時はポータブル・プレイヤーでルー・リードやホークウィンドなんかを千本ノック状態にして聴いてます。

 ルー・リード名言集っつーのがあったら読んでみてー偏屈な面や、いかがわしい面とか、ホント、イメージ先行型のミュージシャンですが、創作活動に関しては真摯です。
んで、時期毎に取り組み方が異なり、作品のセールスより影響力のが強ぇです。
が、そんな彼にもヒット作が出ました。
1989年発表の『ニューヨーク』です。
一応、1972年に『トランスフォーマー』がヒットしてますが、ありゃ半分デイヴィッド・ボウイの作品とも受け取れます。
実際、「ワイルド・サイドを歩け」やViciousなんかが人気みてーですが、去年スーザン・ボイルが権利関係でどうたらこうたらになったPerfect Dayはチャリティーで大御所が集まってレコーディングした際に注目されたっつー。
これに対し「当時、良い曲を書いたと思ったら評価されず、こうやって今更評価されるのは奇妙な気分だ」みてーなことを言っとりました。
あと、Satellite Of Loveはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『ローデッド』製作時にカットされたもんをお蔵出しリアレンジしたもんで、ボウイ効果による名曲と思っとるファンもいると考えると、純粋なヒット作は『ニューヨーク』なわけです。

 さて、『ニューヨーク』発表後から(個人的に)ルーおぢさんの快進撃です。
親友を立て続けに癌で失った上、それを題材にした内省的なコンセプト、評論家諸氏のレビューで負のイメージがまとわりついとる『マジック・アンド・ロス』ですが、実際聴くと秀作です。廉価盤出るまで手が出なかったってば。
ただ、昔から「フツーなら同路線でヒット狙うでしょ」っつー思考はねーよーです。
んで、内省的な『マジック・アンド・ロス』の後にリリースされたのが本作です。

 こりは対訳付きの国内盤をオススメします。中古だとワンコインで買えます。
歌詞が文学的かつちょっとした皮肉なんかも絡めてる曲が多いんで。
しかーし!
帯の「黄昏のワイルドサイド(ニューヨーク)にて」ってコピーはどーよっつー。
一見、枯れておとなしめの内容を予想しちまいますが、かなり刺激的です。

 一曲目のEgg Creamのギターからイカレてます。
高音を潰してファズで歪ませたよーな音から、ストーナー・ロックっぺーですが、ルー・リードの歌が乗ると、良い意味で「ロック・ミュージックの軽薄さ」が堪能できる名曲です。
気づくと「ユースクリーム、アイスクリーム♪」と口ずさんでますから。
二曲目のNYC Manは本人監修のベスト・アルバムのタイトルにも使われたオサレな曲ですが、シェイクスピアの引用も交え、最後は「そんなわけで、この街じゃあっさり死んじゃうちんけな存在なわけだ」みてーに皮肉で終わります。この「俺は瞬きしたら消えて無くなる存在」っつー一言が、NY生まれのNY育ち故の「NYC、愛してるよ」を集約しとると思います。
日本人の僕にゃわからんすもん。
他、Sex With Your Parents (Motherfucker) Part IIじゃ、おぢさん曰く「俺が世界初のラッパーだ」と、ヒップ・ホップがポップ・ミュージックのメイン・ストリームに登場した頃に言ったらしいですが、ポエトリー・リーディングとラップと唯一無二の耳にまとわりつく声をごちゃ混ぜにしたよーな楽しみがあります。
ルー・リードの声質やリズムが生理的に苦手なしとには拷問な曲です。
大体、ブックレットを開くと耳無し芳一状態に顔面文字だらけのコラージュ写真が拝めます。(全体的にちょい電波系。)
Sagmeister_lou_reed_poster.jpg

 本作は傑作じゃあねーかもしれんですが、個人的にご乱心『メタル・マシン・ミュージック』に端を発する「ジミ・ヘンドリクスとは異なるベクトルでノイズを曲の一部に」っつー試みの完成形ちっくな曲がいくつかあります。次作への橋渡しです。
Riptideのモジュレーターを使った変態ギター音は『レイヴン』で進歩してた記憶があります。
全体的に、流し聴きして「ああ、確かに”黄昏のワイルド・サイドにて”だな」っつー印象を受けとりますと、最後のタイトル・トラックでやられます。
メタルというか、曲形式がハッキリしたハードロック的な展開なんですね。
こういったドラマティックな曲で滑らねーのは凄いと思うんです。
よく、ルー・リード=歌・ギター下手、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの中心人物だったから有り難がられてるっつー先入観持っとるしといますけど、歌唱法を変えず、テクニカルなギターも登場しねーのにキッチリまとめてるのはどーよ、と。

 僕が本作を重要だと思う理由の一つに、以後ジャケがヤバくなってくからです。
『エクスタシー』の帯に「黄昏のワイルド・サイドにて」ってつけろよっつー。
実際射精した瞬間か知りませんが、このジャケをルーおぢさんは「エレガントなジャケットだ」と語っております。
lou reed ecstasy

 今世紀に入り、ガレージ・ロックと呼ばれる1960年代中期から後期にかけて誕生した、チープかつ若者ちっくなジャンルがもてはやされるよーになりました。
んで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを引き合いに出されてヒットしたストロークスがデビューした直後、『レイヴン』が発売されることになりました。
某メガ・ストアでは「ストロークスの父親的存在。元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リード最新作!ルーツを聴け!」みてーなプッシュがなされました。
まあ、デイヴィッド・ボウイもゲスト参加しとりますし、ストロークスのファンも気に入る作風だと予想したんでしょー。
が、蓋を開けたら一曲目が疾走型ハードロック。
しかも歌詞が「そこらのガキの武勇伝じゃねえぞ、すげー刺激的なお話!エドガー・アラン・ポーだ!」って、イメージ先行型のロック・ファンは「??」だったろっつー。
実際、ネット通販が発展する前は、レコ屋と本屋にたむろするのが楽しみの一つだったんで、客を観察しました。
ほいだら、試聴して買ったしとは皆無でした。逆に、確か期間限定でストロークスの1stが特別低価格だったんで、そっちを手にしてレジに向かったしとのが多かった記憶があります。
更に、サングラスかけて不敵に笑う還暦がオープンカーに乗っとるジャケなんですが、中を広げるとレザー・コート一枚でバトル・ソード握ってる写真あり。
そーです。コートのボタン外したらチンポがベローンで、片手に剣ってどんな変態よっつー。

 お話を『セット・ザ・トワイライト・リーリング』に戻しまして、巷じゃ上述の『エクスタシー』、『レイヴン』のが評価が高いというか、紹介・レビューしとるしとが多いですが、本作を聴いた後で上記二作を聴くと違った魅力が見えてくるはずです。
んなわけで、映画の主題歌にもなったらしい(でもテイクやメンバーは別だとか。)Egg Creamを聴いてみましょー。

<Lou Reed - Egg Cream>


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天使か悪魔か?トミー・ボーリンの『魔性の眼』

2011年01月13日 22:41

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、禁煙して二ヶ月経過しました。
禁煙から来る抑鬱やらは大分マシになりましたが、プライベートで心身ともに、ついでに懐具合も年明け早々ヤバくなりまして、しばし酒を止めてーですが無理だなっつー。はい。
んなわけで、しばしくだらねーお話を思いつくテンションもなく、手持ちのCDの紹介、レビューでお茶を濁してーと思います。
酒もそーですが、こーゆー時、音楽は困ったときに助けてくれる親友みてーです。
今日の一枚はこりです。

Private EyesPrivate Eyes/Tommy Bolin
(1976リリース)


1.Bustin' Out For Rosey
2.Sweet Burgundy
3.Post Toastee
4.Shake The Devil
5.Gypsy Soul
6.Someday Will Bring Our Love Home
7.Hello Agian
8.You Told Me That You Loved Me




【この作品を一言で語るなら「天使か悪魔か」】


 トミー・ボーリン。
僕がネットで色々書き始めた頃からたまに紹介してきましたが、1980年代までの評価に比べたら大分マシになったものの、未だ正当な評価を得てねーギタリストっつーかミュージシャンです。
で、過去にディープ・パープル時代のライブ盤(不名誉な演奏を収録した『ラスト・コンサート』ではなく、海賊盤を正規にリリースしたもの。)や、傑作『ティーザー』及び、それらに収録の曲は度々紹介してきました。
teaser.jpg

「ビミョーな作品を紹介する」っつー手前、本作を紹介すんのは初めてじゃねーでしょーかね。

 このしと、天才です。

25歳でドラッグのオーヴァードーズで変死するくれー薬物、特にヘロインに依存してたんで、生きてても急激に衰えたかもしらんですが。
ただ、狂気と才能と同じよーに不毛な論議が交わされがちですが、薬物の影響で素晴らしい作品ができる・できないっつーのを考えさせられるしとです。
tommy bolin02
 薬物は何も生み出さねーです。
才能がねー奴ぁどーやってもダミだと思います。
が、僕がネーチャンのまんこに擦りつけると喜ばれそうな髭をさすりながら考えちゃうのは、依存体質っつーのは創作にも依存しちゃうんです。
まあ、才能がねー僕が書くのもおこがましいですが、酔いつぶれるまで酒を飲んでも、なんかひらめいた時の過剰な没頭具合は自分でも怖くなります。
朝六時から始めて、気づいたら夜十一時で、飯も食わねーっつー。ただ、灰皿てんこもりになってましたけどね。
んで、三日くれーすると疲労感が湧いてくるんですが、そこまで没頭したのにろくなもんが出来てねーっつー。
こーゆーとき、僕ぁ「金はいらん。い、いや、辛気くさい顔しなくていいくらいは欲しいな。そ、それより芸の才能が欲しい」と、どぶ川沿いの向こう岸を黄昏のワイルドサイドなーんて感じで眺める気分で、音源とか文章を消します。
ただ、才能があるしとは、その過剰さから完璧を求めたり高クォリティなもんを完成させる傾向があると思います。
あと、黄金期のジャズマンに顕著なんですが、耳かき一杯にみたねー量でも死にかねねーハード・ドラッグで中毒より生きるか死ぬかっつータイト・ロープを渡ってるしととかね。
そのスリルを作品に反映させたり。
まあ、要はダメ人間なんですが、優れたゲージツ作品を生み出すから有り難がられるわけです。
トミー・ボーリンも、そういった過剰型で向こう見ずな系統の天才だったかと。

 トミー・ボーリンが日本で真っ当に評価されるよーになったのは、1990年代に入り、サンプラーが手軽になったクラブ・ミュージック・シーンでサンプリングのネタに重宝されたビリー・コブハムによる1973年発表『スペクトラム』が話題になってからです。
更に、この作品をジェフ・ベックが大層気に入り、収録曲をカヴァーするだけじゃなく、作風まで真似たっつー逸話が僕なんかの世代にも知られるよーになりました。
17歳でプロとして出発したのもすげーですが、ヤン・ハマーのキチガイじみたキーボードと対等に渡り合ってる22歳の若造っつー。
で、日本で評価されなかった理由はいくつかあります。

◆1975年に一旦解散したディープ・パープルの当時最後の来日にて、粗悪なヘロインをポンプし、まともに弾けなかった。
◆上記に加え、前任のリッチー・ブラックモアが同時期に結成したレインボーが日本で人気を博した。
◆ディープ・パープルに一枚参加したスタジオ作『カム・テイスト・ザ・バンド』が煮え切らなかった。
◆1990年代中期まで傑作である1stソロ・アルバム『ティーザー』が未CD化。ロックに分類するには大人びている上、音質が悪い本作『魔性の眼』が国内盤でCD化されていた。(当時は気軽に輸入盤が買えず、通販でも国内盤より高かった。)


良くも悪くもハードロック・バンドであるディープ・パープルに加入した事実が、日本で一番知られているため、発表当時は『炎のギタリスト』っつー邦題だった『ティーザー』がCD化されたのはモトリー・クルーのベーシスト、ニッキー・シックスによる発言が一役かったかもしらんです。実際、タイトル・トラックのTeaserをカヴァーしてましたし。

(『ティーザー』のアナログ盤を指し)トミー(・ボーリン)の作ったものはどれも素晴らしいね。最高だよ。
-ニッキー・シックス


こり、雑誌の「お気に入りレコード見せて語ってください」な企画で発言した記憶があります。

 ディープ・パープルへの加入とほぼ同時期に発表した『ティーザー』には、当時から、もしくは後にビッグネームなるゲスト陣が参加しとります。
こりは彼の才能が高く評価されとった証拠だと思います。
んで、R&B寄りになってったバンドの曲に「あの曲は指一本で弾いた」なんて嫌みを言ってた、偏屈な前任者リッチー・ブラックモアも「妥当な人選じゃないか?トミーは俺よりも巧いジャズが弾ける」と素直に認めてた発言をしとります。

 かくして、代表曲の多くを生み出したリッチー・ブラックモア在籍時は、ブラックモアの顔色をうかがいながら演奏しとったメンバーが和気藹々と楽しめるよーになりました。
現存しとる映像観ましても、『ティーザー』のジャケットのごとくムード・メーカーな雰囲気です。
ステージングも好ましいです。
日本でリッチー・ブラックモアと言えばな評論家、酒井康が意外にもトミー・ボーリンを高く評価しとりまして、来日時の記者会見で束ねた髪をレインボー・カラーにしていたのがとてもクールで格好良いと思ったと自著で綴っております。(とはいえ、ゲイ・セクシャルではなかったようだ。)

 トミー・ボーリンの調子がよかった頃のライブ盤を聴きますと「いやー、ディープ・パープルってやっぱ懐深いなぁ」と思えるもんです。
が、中身も確かめず錠剤を飲み込むなど、ドラッグに対する姿勢からバンドは上手く機能しなくなり解散にいたりました。
リッチー・ブラックモアっつー稀代の偏屈者がいても解散しなかったのに、結成当初からのメンバーもお手上げっつーのはやっぱ筋金入りだったんだろーなぁ、と。
まさに「天使か?それとも悪魔なのか?」です。
ただ、ブルースからジャズまで弾けるギターの腕前、高い歌唱力、ジャンルにとらわれない作曲能力等々から、グレン・ヒューズ、デイヴィッド・カヴァーデイルから「一緒に新しいバンドをやろう」とラブコールをおくられ、解散後も安泰に思えました。
tommy bolin01

 日本じゃ、くそったれなライブをしてくれたおかげで信じがたいですが、本国で二作目のソロにあたる本作を大手レコード会社と契約して製作します。しかもギャラは前払いで。
ほいだら、ギャラ以前に製作費までも関係者に持ってかれるっつー。

結果、どー捻出したか知りませんが、低予算で本作は製作されました。
なので、音質が良かったら不朽の名作になりえたのに、そこらのロック・バンドな音質です。
各曲が素晴らしいんで、テメーのことじゃねーのに悔しくてたまらねーっつー。
ただ、ギャラより才能を評価っつーわけで、有名どころのミュージシャンが参加してたり、コーラスやホーン・セクションもちゃんとおります。
個人的に、「ボサノヴァ好きなのかなぁ?」と『ティーザー』でも思いましたが、本作でもGypsy Soulで見事なギターと歌を披露しとります。
音質以外に、フュージョン調なフレーズを弾く曲で、ギターを弾くしとなら「嗚呼、無理せんでも...」と思う箇所がありますが、昨今約1,000円ちょいで買えるなら名作だな、と。

 念のため書いときますが、本作発表後のツアーでジェフ・ベックの前座を務めつつ、変死しちったっつー判官贔屓な想いは置いといて、好きなしとはホント好きなギタリストです。
話戻りますが、曲だけじゃなく、機材なんかにも「早熟すぎだよ」っつー過剰な拘りをみせてます。(当時トミー・ボーリンが使用、もしくは特注していたエフェクターが昨今発売されている。)
あと、皮肉にも「使わないから」とギターのセンター・ピックアップを撤去したもんも弾いてたリッチー・ブラックモアは「(フェンダーのストラトキャスターで)センターを見事に弾けるのはジミ・ヘンドリクスだけだね」と語っておりましたが、トミー・ボーリンもセンター中心に弾いてたっつー。

 ブルースちっくなバンド、ゼファーから、ジャズっぽいジェイムス・ギャングに加入し、気づいたらマイルス・デイヴィスのバンドでギターのジョン・マクラフリンに気に入られたビリー・コブハムのソロ作に抜擢され、日本においてはディープ・パープル加入がピークと認識されとるトミー・ボーリン。
前任者のリッチー・ブラックモアをイメージさせる曲があるため『カム・テイスト・ザ・バンド』は中途半端ですが、たった数年で新しいサウンドを目指し続けた点は天才と呼んでも差し支えねーだろ、と。
ただし、恋人まで愛想をつかすほどドラッグに耽溺して他界したことが、「巧者と呼ばれても稀代のミューシャンと呼ばれない」理由かと。
1990年代中期以降、遺族がブートレッグ音源等の権利を取得して、正規にトミー・ボーリンのライブ音源等をリリースしましたが、もっときっちりした体裁にしてくれたらなぁと思います。
んなわけで、一曲聴いてみましょー

<Gypsy Soul/Tommy Bolin>

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ルー・リード/Berlin Live At St. Ann's Warehouse

2011年01月11日 15:30

【本記事は、作品よりも名前によるイメージが強すぎるため、それを払拭するために長文です。(それでも半分ほど削除した。)】
【特別思い入れがなければ映画を収録したDVDをお奨めします。】

Berlin Live at St Anns WarehouseBerlin Live At St. Ann's Warehouse/Lou Reed
(2008年リリース)

1.Sad Song (Intro)
2.Berlin
3.Lady Day
4.Men Of Good Fortune
5.Caroline Says I
6.How Do You Think It Feels
7.Oh, Jim
8.Caroline Says II
9.The Kids
10.The Bed
11.Sad Song

12.Candy Says
13.Rock Minuet
14.Sweet Jane




【この作品を一言で語るなら「敢えて映画は観たくない」】


 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、ルー・リードって名前とイメージ先行で、あんま、作曲能力や自身の曲も客観的に分析できる審美眼は着目されねーです。
まあ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1stアルバムの功罪だと思いますが。

 個人的に、デイヴィッド・ボウイがプロデュースした『トランスフォーマー』、続く『ベルリン』、『死の舞踏』の流れは神懸かり的です。
ただ、当時のメディアの反応は冷淡だったよーで、『ベルリン』の草案を聞いた評論家は『トランスフォーマー』と同路線のグラム・ロックなコンセプト・アルバムを予想したみてーです。
Berlin.jpg
ほいだら、作風が全く異なった上に陰鬱なストーリーで「裏切られた」的な批評が多かったよーです。実際売れませんでした。(勿論、冷静に傑作と評価した評論家もいたようだが。)
んで、続く『死の舞踏』は、モデルや女優を目指してNYにやって来て落魄していく女性達をサリーっつー架空の人物に集約し、これまた陰鬱なストーリーです。
が、R&B研究家でもあるルー・リードは、ノリがええファンキーな曲でアルバムを固め、クセになる作品です。
こりを積極的に売り出さなかったレコード会社に「こんなに良い曲を売ろうとしてくれないのは残念」と癇癪起こして発表したのが、ギター・ノイズ作品『メタル・マシン・ミュージック』です。(ヴェルヴェッツ脱退の時も名曲揃いなのにプッシュして貰えず憤慨した過去がある。)
こり、後年本人は「あれは過ちだった」と素直に認めとります。
偏屈なしとらしいですが、アーティストとしては好ましい思考回路だと思います。
コアなファンは名盤扱いですが、「スカム/トラッシュの」が抜けとります。
ギター・ノイズを多重録音し数十分っつーのはやってる側は楽しくてたまらんのと、後年の作品で無駄じゃなかったと思える点がわずかにあるんで嫌いじゃねーですがね。

 さて、『ベルリン』にお話戻しまして、プロデューサーはアリス・クーパー、後にキッス、エアロスミス、ピンク・フロイド、ハノイ・ロックス等々を手がけることになるボブ・エズリン。
このしと、1970年代中期以降はハードロック系のバンドのプロデュースが多いですが、現在もピーター・ゲイブリエルと共同作業したり現役で多面的です。
んで、このしとがプロデュースや作・編曲に絡むと当時はゲストがとにかく豪華。
同年発表であるアリス・クーパーの『ビリオン・ダラー・ベイビーズ』はマーク・ボラン、ドノヴァンらが参加しましたが、『ベルリン』にはベースにジャック・ブルース、トニー・レヴィン、キーボードにスティーヴ・ウィンウッド、ボブ・エズリン、ドラムにエインズレー・ダンバー、ギターはソロ転向後のアリス・クーパーを長年支えたディック・ワグナーとスティーヴ・ハンター、他、ボブ・エズリン子飼いのホーン、ストリングスっつー超豪華な面子です。
てかね、スティーヴ・ウィンウッドにオルガンだけって、なんつー贅沢な。


【こっからストーリーです】

 主人公である「僕」はベルリンの壁の傍でキャロラインなる女性と出会います。
この回想し独白するとこが何度聴いても鳥肌もんです。

ベルリンの壁の傍
君の身長は5フィート10インチ
素晴らしい夜だった
キャンドルの灯りと氷を浮かべたデュポネ

-Berlinより


 しかし、キャロラインは破滅型の性格で、夜な夜な飲み屋で歌を披露しては客の一人とモーテルで売春をして生計をたてているという。
こりはLady Dayで歌われとりますが、僕ぁ下積み時代のビリー・ホリデイをモデルにしたと思っとります。
曲名が彼女の愛称レディ・デイですから。
Billie Holiday
 キャロラインは「僕」のことを単なるセックス・フレンドとしか見ておらず、突き放すような態度も見せます。
が、心優しい「僕」は「それでも彼女は僕にとって高貴な女王様だ」と諦めません。
そこへ一人の男が割って入ります。

 ジムという名の男はキャロラインを寝取るだけじゃなく、「僕」もジムもバイ・セクシャルらしく、二人も肉体関係にあったと匂わせるくだりがあります。
複雑で頽廃的な三角関係ですな。
んで、キャロラインに薬物を教えたと思えるくだりも。

 キャロラインは子供を身籠もりますが、誰の子かわかりません。
更に彼女もまたバイ・セクシャルであったことがうかがえる過去や、夜の街での行為から「母親としてふさわしくない」と周囲の人間は、彼女から生まれた子供を引き離します。

だが、彼女を責められはしない
落魄した街の女は客を選べないのだから

-The Kidsより


 荒廃した生活と、我が子を連れ去られたショックからキャロラインはベッドで自殺します。
自殺した夜を回想するThe Bedが終わると、時間は現在に戻り、Sad Songでキャロラインの写真を眺める「僕」は、その美しさと威厳は亡くなった今も変わりなく、連れ去られた子供と三人で暮らすことを望んでいたことも独白します。
んで、二人が暮らしていた部屋でベルリンを去ることを決意します。
Caroline.jpg

 なお、製作を振り返りボブ・エズリンは主要メンバーがノイローゼ寸前まで追い込まれたと語っております。
全曲の作曲と「僕」に入れ込みすぎたルー・リードは「精神的自殺を図った」と語ったっつー。
完成直後、「箱にしまって二度と出してはいけない」と思ったそーですが、いざ発表するや賛否両論。現在、特に日本じゃほぼ名盤として認識されとります。


【映画になった】


 2005年頃でしょーか、『ベルリン』の再現コンサートを行うとアナウンスされました。
で、2006年に実現し、その模様をジュリアン・シュナーベル監督の下、楽曲の内容とリンクした再現ドラマ風の映像と演奏シーンを絡めた映画が製作され2008年に公開されました。
で、僕、これ敢えて観てねーです。
『ベルリン』って、曲聴きながら、ブックレットの写真を見て脳内で映像を再生すんのが一番だと思ってますんで。
ただ、サントラと呼ぶのはもったいねー内容のコンサート部分だけを抽出した本作は聴きました。
スタジオ版とどっちがええかっつーと、どっちも異なる良さがあります。
しかも、The Bedとか単発でライブ演奏はしても、初の全曲再現はルー・リードにとって失敗したら単なる集金イベントですから、かなりストイックな生活をおくって挑んだと思われます。
この写真は、恐らく五日間に渡って行われた公演のうちいずれかの写真なんでしょーが、当時63歳とは思えない体です。
lou reed

 名作と呼ばれたアルバムの再現がブームだった事もあり、多くのミュージシャンに見られる衰えが心配でしたが、1980年代頃から変わってねーです。
まあ、喉を酷使するよーな歌い方じゃねーこともあんでしょーが。
んで、イントロでラストのSad Songの後半にリフレインするコーラスが始まり「え!?」と思ってるとBerlinが始まり「やられた!」と。たしかにSad Songで「僕」がいた部屋から回想が始まるんだもんな、と。
こり、最後に聴いてみてーと思いますが、こっからLady Dayへの流れはスタジオ版以上だと思います。

 主要な参加メンバーはギターに当時と同じスティーヴ・ハンターがおりまして、スタジオ版以上にハードロックなギターです。
ルー・リードもフィードバッカー(ペダルを踏むと人工的にギターがハウリングする。)使ってるとこもありますね。
昔、ハードロック調のサウンドとメンバーがルー・リードらしくないというこだわりあるレビューを読んだことあるんですが、本人はこういったギター・サウンドは好きみてーですね。
他、ストリングスやコーラス隊も豪華ですが、ブルックリン少年少女合唱団も参加してます。
僕が一番たまげてるのが、2003年の『レイヴン』ツアーからコーラスとして参加しとる、アントニー・アンド・ジョンソンズのアントニー・ヘガーティです。
『レイヴン』ツアーでもCandy Saysを歌ってましたが、歌唱力もさることながら、風貌だけじゃなく中性的な声が忘れられねーっつー。
Antony Hegarty
現在は太って長髪ですが、この画像の頃に生で見たら失禁しますわ。
本作の『ベルリン』パートが終了すると、ファン・サービスにCandy Says、Rock Minuet、Sweet Janeを演奏しとります。
Candy Saysは今回もアントニーが歌ってんですが、途中でルー・リードも参加します。個人的にアントニー一人の『アニマル・セレナーデ』収録のが好きです。
いつもなら?Sweet Janeやって、最後にRock 'n' Rollっつー、ルー・リードが「ヴェルヴェッツはこんな良い曲作ってたのになぁ」と言いたげな名曲連発ですが、『エクスタシー』収録のRock Minuetがあって嬉しい誤算でした。
<Lou Reed - Berlin~Lady Day(Live2006)>

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<Lou Reed - Berlin~Lady Day(Live2006)>

素面でも十分楽しめるッザ・ヘッズの『リラキシング・ウィズ...』

2011年01月07日 18:08

【こういう記事を書くから勘ぐられる。】

relaxing.jpg
『Relaxing With...』/The Heads
1995年リリース(2010年デジタル・リマスター)

1 Quad
2 Don't Know Yet
3 Chipped
4 Slow Down
5 U 33
6 Television
7 Woke Up
8 Widowmaker
9 Taken Too Much
10 Coogan's Bluff


<Bonus Disk>
1 Spliff Riff (Garage Rec 1992?)
2 Quad 7"(1994)
3 Woke Up 7" (1994)
4 Looking At You (1994)
5 Coogan’s Bluff 7”(1995)
6 Theme 7”(1995)
7 Television 7”(1995)
8 Steamroller 7”(1995)
9 Jellystoned Park 7"(1995)
10 Quad (BBC Radio 1 Rock Show - 31/03/96)
11 U33 (BBC Radio 1 Mark Radcliffe - 02/05/96)
12 Television (BBC Radio 1 Mark Radcliffe - 02/05/96)
13 Chipped (BBC Radio 1 Peel Session - 10/11/95)
14 Widowmaker (BBC Radio 1 Peel Session - 10/11/95)
15 Theme (BBC Radio 1 Peel Session - 10/11/95)
16 Woke Up (BBC Radio 1 Peel Session - 10/11/95)
17 Spliff Riff (BBC Radio 1 Peel Session - 10/11/95)



【この作品を一言で語るなら「考えるな!感じろ!」】
【もう一言言わせてくれ。「ロック・ファンは1500円内の今のうちに買っておけ」】

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、酔っぱらいとはおとろしいもんです。
僕ぁ家でも外でも酩酊しねーと気がすまねーです。
んで、運動と禁煙で酒量が増えまして、たまに「欲しいなぁ」と思って吟味してですね、酒で気分が大きくなり所謂「ぽちる」をすることがあります。
Amazonとか、一回支払い方法とか決めちゃうとワンクリックで注文できるじゃねーですか。
なので、「あ!どこも店頭在庫無いのに、シェアが高いここに何故まだ在庫が!」と思うと、CDとか注文しちって数日後に届いてることがよくあります。
「ありゃ?欲しいと思ってたのが届いてら。って、注文したんかい!」っつー。(俺は基本的にPCのメールをあまりチェックしない。)
まあ、CDやDVDだからええですよ。これが大型電化製品とかなら脇の下から汗です。

 先日、またもや690円CDを注文しよーとしたらですね、「カートの中に入っている商品があります。同時に購入しますか?」みてーなメッセージが表示され、よく見たら本作だったっつー。
こり、まだ若気の至りだった頃、名盤と聞きながら廃盤で手に入らなかったんすよね。
んで、今回の再発で「あのときから十年以上経ってるし、んー...」と考えた結果、注文しようとして確定ボタンをクリックする前に酔いつぶれたんだな、きっと。

 1990年代のお話ですが、ストーナー・ロックっつージャンルが日本でもプチ・ブームになりました。
Stoner Rockと書いてストーナー・ロックと読みます。
おわかりですね、「ストーン=知覚を攪乱する薬物で酩酊状態、特に沈み込むような状態であること」ですから、主にマリファナによる酩酊状態を想起させるサウンドっつーことでカテゴライズされました。
実際、ミュージシャン側がジャケットや歌詞にマリファナを讃えるよーなことしてますし。
が、エレクトロニクス系の音楽と同じで、素面じゃ楽しめねーかっつーと、んなこたぁありません。
てか、僕、好きなミュージシャンがいたとして、同じ畑で全部が全部好きなミュージシャンってわけじゃねーです。
どんな状態でも「良い曲は良いね」と思えなきゃダミなんです。
てか、ロック・ミュージック自体、そーいったカウンター・カルチャーと融合して発展してきましたんで、要は先祖返りです。
ただ、多くは初期ブラック・サバスに影響を受けたバンドだったんで、メタルから派生したサウンドだと思います。

 作家ウィリアム・バロウズは、ジミー・ペイジとの対談で「ロックには催眠作用がある」と語り、モロッコやら現在入ることが出来ないカシミール地方へ足を運ぶよー熱く語ったと聞きます。
バロウズっつーしとは、凄いとこは確かに凄いんですが、全体的にみるとスカム(カス)でストーナー・ロックの細分されたジャンルにもありますがスラッジ(沈殿した泥)が融合したよーな存在なんで、電波な発言です。
が、確かに1960~1970年代初期にかけてのロック・シーンってのは、衝動的であり、本能にうったえるもんがあります。また、そこにインテリジェンスを加えたバンドもいました。

 お話戻して、この原点回帰的なムーブメントにおいて登場したバンドの多くは殆ど巧者でした。
前述のよーにメタルをルーツにきっちり楽器を練習してきたしとが多かったからだと思います。
あと、ブラック・サバス由来のサウンドっつー先入観から重苦しいバンドばかりを想像しちまいますが、ハードロックやメタル隆盛前夜的なスリリングな音を出しとるバンドも多いです。

 今回紹介するザ・ヘッズは、国内盤が発売されねーどころか、輸入盤も即廃盤になり入手困難でした。
更に、この手のバンドってマニヤ向けでして、CD主流の時代にアナログ・オンリーで自主製作だったり、CDでもしっかりプレスされたもんじゃなく、CD-Rに焼いたのをペーパー・スリーブに入れて限定販売っつー売り方なんで、全音源抑えとるしとはキチガイです。はい。
で、1995年に発表された本作をデジタル・リマスターし、ボーナス・ディスクはバンド結成時にガレージで録音した曲や、アルバムに収録されることになるアナログ盤の1995年までの曲、BBC Radio1に出演した際のライブを収録の音源をまとめてます。
サウンドは良好でして、この手のバンドは、メジャー・レーベルからリリースした作品以外くぐもった音が多く、聴いてて辛いんですが、1995年に自主製作とは思えねーよーなエッジの鋭さがあります。
「やっと聴けた!」っつー主観補正もあるでしょーが、今年は生産性のある年にしよーとギターを磨いてた僕ぁ、改めてファズっつーかビッグ・マフが欲しくなった次第です。

 最後にアナログ・シングル盤のWoke Upを聴いてみてーと思いますが、この曲はアルバム・ヴァージョンよりカッチョエエかな、と。
なお、このバンドは映画中心に色々パロディ化するのが好きらしく、1stシングルはラス・メイヤー作品をモチーフにしてます。
theheadsquad.jpg
ともあれ「でも、お高いんでしょう?じゃなく、いかがわしいんでしょう?」と思っとる方いは聴いて欲しいですね。
今日日、カッチョつけてるバンドよりずっと良いっつー。
ポエトリー・リーディング的なヴォーカル、凶暴なギター、勢いだけとは思えねーベースとドラムの実力と聴き所満載です。

<The Heads - Woke Up (Single)>


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Blue Jeans & Moonbeams - Captain Beefheart

2011年01月05日 21:51

【今日の記事はくだらない裏話と、相変わらずビミョーな作品のレビューです。】

BandM.jpg
Blue Jeans & Moonbeams/キャプテン・ビーフハート
1974年リリース

1.Party Of Special Things To Do
2.Same Old Blues
3.Observatory Crest
4.Pompadour Swamp
5.Captain's Holiday
6.Rock 'N' Roll's Evil Doll
7.Further Than We've Gone
8.Twist Ah Luck
9.Blue Jeans And Moonbeams




【この作品を一言で語るなら「バンドじゃなく声がマジック」。】

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、キャプテン・ビーフハート。
現在入手できる自伝的評伝が翻訳出版される前、確か結構分厚い評伝が日本でも出版され、一瞬買おうかと思いましたがドアーズの評伝を買いました。(『ムーンライト・ドライブ』。ジム・モリソン脱退、他界後の作品も楽曲毎に詳しく紹介された既存のものとは異なる内容だった。)
んで、熱狂的なファンでもなければ、評伝の一冊も読んでねーんで、記事を書くか書かねーか迷ったんですが、思い切っていっちゃいましょー。

 昨年、キャプテン・ビーフハートが亡くなりました。
多発性硬化症からくる合併症とのことでした。
このしともまた、親友であるフランク・ザッパと同じく、ファンは狂信的です。
んで、フランク・ザッパがプロデュースした『トラウト・マスク・レプリカ』が最も有名な作品です。
Trout Mask Replica
むかーし、僕、この作品を紹介したことありますけど、作曲から録音、ミックスまでの過程を知らねーと、十回以上聴かねーと良さっつーか凄さがわからんです。
これを熱狂的ファンは「これ聴いてみ」と薦めます。
ほとんど一見さんは感動する以前に拒絶反応を示します。
良心的なファンは、デビュー作の『セイフ・アズ・ミルク』あたりを薦め、気に入ったら『トラウト・マスク・レプリカ』を聴いてみるといいと説明してくれるはずです。
個人的には、現行、ファンがイメージする突き抜けてる感のある『スポットライト・キッド』と楽曲の良さが際だつ『クリアー・スポット』が2in1になっとるのをオススメしてーとこですが、あえてそーしなかった理由はあとで。


《ところで、なんでキャプテン・ビーフハート?》

 よく、フランク・ザッパが命名っつー説がありますが、ザッパ自伝によりますと、高校時代、キャプテン・ビーフハートことドン・ヴァン・ヴリートは実家で恋人と同棲してたそーです。
んで、叔父も同居しており、小便するときはドア全開でして、ドンの恋人が通りがかると露出させたチンポを誇示して「おぉ、まるで牛の心臓のように見事だなぁ」と呟いてセクハラしてたっつー。
これがどーにかなって「キャプテン・ビーフハート」と。
因みに1962年にザッパが『キャプテン・ビーフハート対ブーブー人』っつーSF映画を製作することになり、そこで思いついたんじゃねーですかね。
こりは撮影以前に、何故か風俗法に抵触すると理不尽な言いがかりをつけられ、再三にわたる刑事の誘導尋問(腕時計に盗聴器入り。)にうっかりひっかかって刑務所にぶち込まれました。
んで、出所したら借金こいて購入したスタジオがぶっ壊されてたっつー。


《ハンコとサインは気易くするなと親は教えろ》


 前述のとーり、キャプテン・ビーフハート側の書物を未読なんで、フランク・ザッパによる視点からですが、キャプテン・ビーフハートは理詰めな性格ではなかったと。
こりはホントだと思います。諸作品聴くと想像に難くねーです。
んで、それ故、後先考えずレコード会社が提示した書類にサインしたと。
結果、契約の縛りにより思い通りの活動が出来なくなり、ザッパに泣きつきツアーに帯同します。
こんときの作品がフランク・ザッパの1975年発表の『ボンゴ・フューリー』です。
beefheart and tzappa

で、その前年に発表されたのが今回紹介する『ブルージーンズ・アンド・ムーンビームス』です。

 このアルバム、狂信的なファンには評判悪ぃです。
理由は、レコード会社が勝手にミックス・ダウンしたとか、キャプテン・ビーフハート及び彼が率いるマジック・バンドらが気に入ってねーと発言したからとか色々あります。
当事者が気に入ってねー理由は、それまで一癖あったブルース、R&B由来のサウンドが、そこらのバンドと同じよーになったからじゃねーかと思います。

 当時の海外のメディアにおける評価も軒並み低かったよーです。
でもですね、楽曲、バンドの演奏いずれも客観的に聴くと素晴らしいです。
んで、すげー真面目に歌ってます。
よく、ブルースマンであるハウリン・ウルフの影響について語られますが、ザッパ曰「ドンもR&Bの鬼だったから」っつーわけで、中庸な楽曲に対して見事にマッチしてます。
更に、現行のCDは傑作とされる作品を出し抜いてデジタル・リマスターされて音質良好です。
なので、他にオススメしてー作品はあれども、アホみてーに『トラウト・マスク・レプリカ』薦めるより、彼の歌唱力や声の魅力を堪能できる中庸な本作を最初に聴いて欲しい、と。
特に〆のタイトル・トラックは素晴らしいです。最後に聴いてみましょー。


《なんとかの帰還》

 キャプテン・ビーフハートは元々彫刻家を志してたそーです。
んで、半分嘘だと思いますが、奨学金貰ってフランスだかに留学するはずが、両親の「ゲイジツ家になるとゲイに目覚める!」っつーアホな意見から留学は中止になりました。
とはいえ、前述の後先考えねー契約による縛りに疲弊し、1982年に音楽業界を引退しました。
引退後は本名で画家として活動し、個展も定期的に行っていたよーです。
なお、引退直前にフランク・ザッパのもとを訪れ、そのときの印象を「ひどく疲弊した様子だった」とザッパは自伝で綴っております。
なんでも、1970年代後半から多発性硬化症が発症してたよーなんで、1980年代に遺した二枚は中々の作品ですが、かなり辛かったんだろーなぁ、と。

 僕ぁゲージツはわからんですが、キャプテン・ビーフハートが本名で画家として活動していた頃の作品をいくつか掲載してーと思います。
しかしなぁ、『トラウト・マスク・レプリカ』でミュージシャン向けの存在になっちまいましたが、ミュージシャンとしても、もっと広く知られてもいい才能持ってたよなぁ。
Don Van Vliet01

Don Van Vliet02

Don Van Vliet03

<Captain Beefheart - Bluejeans and Moonbeams>


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