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音楽におけるスカム・フィクション

2010年10月18日 11:42

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、ポップ・ミュージックで、一つのストーリーを描いたコンセプト・アルバムって沢山あります。
が、ストーリーはシリアスなもんで、しかも曲がストーリーの一部なんで、音楽作品としてはつまらねーことが多いです。いくつか名作がありますが。
なので、ストーリーや歌詞に注目すべきとこなのに、音楽作品として過大評価されとるのが殆どなんで、有り難がって迂闊に手を出すのは危険です。

 このコンセプト・アルバムにおいて、珍しくスカムなストーリーで曲も秀逸な一枚があります。
デヴィン・タウンゼンドの『パンキー・ブリュースター~史上最高の偽物パンク~』です。
えー、このしと、僕、弾き慣れない変則チューニングのギターで曲をカヴァーしたことあるくらい好きです。
ただ、256トラックに録音した音をもう256トラックに録音し、左右合計512トラックをCDにする際のミックス、マスタリングをするっつーアホみてーなことを一人で作業して、精神を病んで無人島にしばし遁走したことがあり、その後からちょっと言動や作風がたまに「大丈夫かなぁ」になりました。継続して創作、ツアーも行ってますが。
因みに、このCDの規格でCDとは思えねー音の壁に対し、ヒットチャートの傾向を評論するしとが当時「10年後に主流になるサウンド」と言ってた記憶がありますが、主流どころか真似しとるしとはいねーです。
てか、そこまでしてもCDにするとダイナミクスが削ぎ落とされちゃうはずなんで。どーやってマスタリングしたんすかね?

 お話戻して、『パンキー・ブリュースター』ですが、前述の「大丈夫かなぁ」な発言とかが多くなる前に発表されたもんです。
この作品を制作するきっかけは、1990年代中期に起きたメロコア・ブームに対する怒りからだそーです。
デヴィン・タウンゼンドは主にメタルをバック・ボーンにしとりますが、パンク、ノイズ、アンビエントなんかからも影響を受けており、ブームとそれに合わせて鞍替えしていくバンドらに「こんなのパンクじゃねえ!この程度のもん、すぐに作ってみせらぁ!」っつー怒りと嘲笑から思いついたと。
なお、一曲あたりの作曲時間約30分。アルバム・アートも手製で、完成まで約二週間。
たまげたなぁ。

 物語は、とあるライブ・ハウスの「ビール二杯で一杯分の日」から始まります。
その夜、出演したのは、デス・メタル・バンドであるクリプティック・コーナー。
観客からゲラゲラ笑われながらデス声で「俺たちがクリプティック・コーナーだ...地獄へ、堕ちろぉおお!!!」と挨拶して演奏開始。
が、途中でギターの弦が一本切れてテンパり。

「切れた!弦が切れちゃったよ!」

「おい、どうする?演奏できないぞ!」

「そうだ、パンクできるか?」

ズズタタズズタタ♪

「お、いい感じ!こいつぁまるでグリーン・デイみてーだ!」


と、一曲目が始まる手の込みよう。曲もしっかりグリーン・デイのパクリっぽいもの。
アホですね。
で、この夜を境に、「メタル?俺たちゃガキの頃からパンクやってたぜ」とパンキー・ブリュースターと改名、メロコア・バンドとして活動することになったのでした。
が、この作品、単にブームやそれに乗った輩への批判だけじゃなく、過去に自身が味わったショウビズ界への怒りも含まれてます。
なので、曲もどこかメタルっぽいですし、曲間にあるレコード会社から「こういう声を出せ」っつー指示等、イメージ戦略を皮肉った箇所があります。
Fake Punkっつー曲なんか、タイトルどーり、パンクっぽいハードロックっすから。

 随所にデヴィン・タウンゼンドの独り芝居(人物毎に後で音を変えているが。)がありまして、これ、今でもありそーなガキんちょの生活みてーでおもれーです。

「宅急便でーす」

「サンキュー、ポストマン!」

ガサガサガサ...

「やったぜ、チェーン付きお財布!これで俺もパンク・ロッカー!」

かくして、スターダムへまっしぐらなんですが、「ホントはメタル大好きなのに、これでいいのか?」とジレンマに苛まされるっつー。
しかし、もう引き返せない。
結局、グラミー賞ならぬグラニー賞を受賞しちゃうんですが、最後に我慢しきれずデス・メタルを演奏しておしまい、と。
なお、本作の国内盤には、歌詞だけじゃなく狂言回しや独り芝居、作品中に出てこないメンバーの自己紹介なんかが翻訳されて掲載されてます。
時事ネタものなんで、今聴くと面白さ半減ですが、上記の独り芝居なんかは今でも笑えます。
んなわけで、アホな物語の最初を聴いてみましょー。

<Devin Townsend (Punky Bruster) - Recipe for Bait>


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