ＳＯＵＬ　ＫＩＴＣＨＥＮ : 古き良き時代のイタリアン・ポップを甦らせた名盤『モンド・カーネ』

『Mike Patton's Mondo Cane』／Mike Patton
2010リリース
1.Il Cielo In Una Stanza【Mina】
2.Che Notte!【Fred Buscaglione】
3.Ore D'Amore【Fred Bongusto】*
4.Deep Down【Ennio Morricone】
5.Quello Che Conta【Ennio Morricone】
6.Urlo Negro【The Blackmen】
7.Scalinatella【Roberto Murolo】
8.L'Uomo Che Non Sapeva Amare【Nico Fidenco】
9.20 KM Al Giorno【Nicola Arigliano】
10.Ti Offro Da Bere 【Gianni Morandi】
11.Senza Fine【Gino Paoli】



　こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、各曲の最後に【】書きされてるのは、原曲を歌ってたしとか作曲家名です。
イタリアン・ポップに造詣が深くねーんで、ミーナ、フレド・ボンガスト、エンニオ・モリコーネ、ジーノ・パオリくれしか名前を知らなかったりするんですが、マイク・パットンの一作品としてレビューしてみてーと思います。

　ぶっちゃけ、一聴すると、殆ど原曲に忠実で、サウンドのスケール感を大きくしたカヴァー集ですが、細かい点に注目すると興味深いです。
あと、マイク・パットンの声と歌唱法の使い分けが絶妙です。

　細かい点に注目すると興味深いっつーのはですね、コンサートじゃオーケストラをバックにした小細工なしですが、本作は、マニュピュレーターもこなすマイク・パットンお得意のノイズや、シンセサザーによる浮遊感のある効果音がこっそり聞こえる曲があります。
が、これが、邪魔くさくない程度でして、「やっぱりパットンは変態」といった一般のイメージを裏切るもんです。
あと、歌ですね。
これ、本家より上手い曲が何曲かあります。三曲目のOre D'Amoreはフランク・シナトラが英語版を歌っておりまして、流石に優雅な中低音の御大にはかなわねーかな、と。
ただ、僕が注目してーのは、過去の様々なプロジェクトやコラボレーションで使用してきたクリーチャー声や、シャウト、ウィスパー・ボイス、伸びやかな歌唱法を使い分けてるんですが、彼の（少なくとも日本での強いイメージである）キワモノっぽさがないとこですね。
こり歌唱力の高さに由来すると思いますが、過去に様々な発声を試した結果、使い分けも研究、自己分析したんじゃねーでしょーか。
イタリア語歌詞をまるでネイティヴに歌い上げてますが、元々イタリア語は堪能だそーなんで、そんなに驚くこともねーかな、と。

　十数年前にフレンチ・ポップがちょっとしたブームになった記憶があります。
ブリジット・バルドーなんかの、おキュートさんの作品に未発表曲プラスしてCD化したり。
でも、イタリアン・ポップって当時も今も手に入る作品が少なく、フレンチ・ポップが好きなら気に入りそーですが、日本じゃブームになったことねーです。
んなわけで、1950～1970年代初期あたりまでの代表曲をカヴァーした本作は、イタリアン・ポップ入門にも打って付けな作品だと思います。

　最後に念のために書いときますが、グァルティエロ・ヤコペッティの映画『世界残酷物語』の原題『Mondo Cane』というプロジェクト名から、コアなファンはあまりのまともさに驚くと思いますが、マイク・パットンが敬愛するエンニオ・モリコーネを二曲も、ラストは、これまた大御所ジーノ・パオリのカヴァーという点にイタリアン・ポップへの愛情と真剣さがうかがえます。
コンサートも再結成フェイス・ノー・モアの活動の合間にちょくちょく行うほど精力的でして、今月、フェイス・ノー・モアが再度解散したら、モンド・カーネで来日して欲しいですね。
こんなに完成度の高いカヴァー・アルバムは滅多にねーですから。


《追記》
　作品の性質上、リアル・ショップでは在庫の再入荷の目処が立たなかったり、ネット・ショップでも在庫が少なく、取り扱いを止める可能性もある。
ただし、マイク・パットン主催のレーベルIpecac Recordingsのサイトからも購入可能。

関連記事

• ポルノ女優だって議員にもなれば歌も歌っちゃいますなチッチョリーナのアルバム。 (2010/12/17)
• スペルマ大将バディ・ガイの新作『リヴィング・プルーフ』 (2010/12/15)
• ロニー・ル・テクロの「象が乗っても切れない弦」 (2010/11/25)
• 生と死の幻想 (2010/11/21)
• 古き良き時代のイタリアン・ポップを甦らせた名盤『モンド・カーネ』 (2010/11/19)