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サントラが欲しい映画『プルートで朝食を』

2011年03月03日 21:49

【ダイレクトなネタバレはない。】

pluto.jpg『プルートで朝食を』<2006年公開>
監督:ニール・ジョーダン
出演:キリアン・マーフィ
リーアム・ニーソン
ルース・ネッガ
ローレンス・キンラン
スティーヴン・レイ
ブレンダン・グリーソン
ギャヴィン・フライデー
イアン・ハート
エヴァ・バーシッスル
ルース・マッケイブ
シャーリーン・マッケンナ
スティーヴン・ウォディントン
ブライアン・フェリー(特別出演)



 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、先日、ロリー・ギャラガーの1974年アイルランド・ツアーを収録した映画『アイリッシュ・ツアー』を紹介しました。
んで、その際、「ケルト神話やらじゃなく、アイルランド独立と以降の紛争をテーマにした映画」をいくつかピックアップしました。
で、そん中で、「これを同列にすると、アカデミックにヨーロッパ史に詳しい方から叱られないか?」と思いつつ、後述しますが「これもありでしょ」と『プルートで朝食を』もピックアップしました。
ただ、毛色が違うんで、他作品とスペース空けましたが。

 この作品、アイルランド独立を描いた『麦の穂をゆらす風』に出演してたキリアン・マーフィー主演つーこって義理で観たんですが、これが、まあ、よく練られとると感心しました。
『アイリッシュ・ツアー』にて、北アイルランド問題でカトリックとプロテスタントが対立、暴力による応酬が行われていた中心部ベルファストの映像が観られます。
なんでも、ロリー・ギャラガーは1960年代に結成したバンド、テイスト時代からベルファストでライブを行っていたからか、ひじょーに人気があったそーです。
観客はカトリック、プロテスタントが入り交じり、それ故IRA(アイルランド共和軍)が同胞もいる会場を攻撃できなかったっつー都市伝説みてーなもんがあります。
ただ、映画じゃ開演後のバックステージは厳戒態勢です。
ガチでヤバイとこで演ってたんだな、と。
そんな焦臭い時代のアイルランドとロンドンを舞台にしてんですが、『プルートで朝食を』は大雑把に三つの見方ができると思います。

1.単純にぶっ飛びつつポジティブでオサレな作品として観る。

2.1970年代にヒットした曲をBGMにしているが、そのセンスと映像のリンクの素晴らしさに注目する。

3.巧妙に仕掛けられた科白やストーリーを楽しむ。



 この映画が面白ぇと思ったのは、まず設定ですね。
アイルランドの田舎町に住む神父宅にパトリックっつー名の赤ん坊が母親に捨てられます。
アイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックから頂戴しとるのは明らかです。
神父はこの子を保護し、養子に貰ってもらいます。
が、物心つく頃に性同一性障害であることが明らかになるっつー。
現在はともかく、当時なら「座敷に隠せ」っつー子が成長し、1970年代っつー英愛の関係がピリピリしとる時期に自分を捨てた母親を捜しに旅立つっつー。

 お涙頂戴の王道、「親探し」へ性同一性障害の主人公が旅立つって、一見「なんだよ、奇をてらってんのか?」ですが、僕が感心したのは主人公パトリック、自称キトゥンの性格付けです。
原作は翻訳されてねーんで、どこまでいぢったか知りませんが、非常に多面的な性格です。
まず、女性的な美の追究と、無意識な狡猾さが見受けられます。
物語の後半に覗き部屋で働くまで、一見して華奢な男だとわかる風貌です。
男だと知りつつ、彼女に対して恋心を抱く男が何名か登場しますが、唐突な展開に思えつつ「これは父性本能をくすぐられたんやね」と思えます。
こりは、「我が道を行く」っつー純粋さも作用しとると思います。
で、「心は女性」と思いこんで観てると違和感を覚えると思うんですが、何気に男性的な面もあります。
まず、ロマンティストな面、包容力を裡に秘めている点、女性的な強さで生きつつ内面は男性的な涙もろさがある等が挙げられます。

 キトゥンは、度々IRAの作戦会議等、真剣に語り合っとる場に居合わせることがあり、その都度「シリアス、シリアス、シリアス!なんでみんなそうなの?」と呆れますが、一番シリアスなのは自分自身で、その生き方がひじょーに真剣なのです。
おそらく、1972年のイギリスでのパブ爆破テロが起き、実は冤罪だったっつー事件とダブらせてると思いますが、テロリストと間違われ逮捕され、暴力で自白を迫られようがなにされよーが己に嘘はつかねーっつー。

 包容力は、理解者であり親友のチャーリーが妊娠するくだりでかいま見られます。
IRAの恋人の子を授かったチャーリーはどーするか悩みますが、キトゥンは恋人に認知させ産むことを勧めます。
が、どんどんヤバイ方向に向かっていく恋人にチャーリーは堕胎することを考えます。
つまり、遠からず父親が死ぬのをわかってる子供を産むべきではない、と。
チャーリーは、キトゥンに「もし、産んだらどうなると思う?」と訪ねると、キトゥンは「私みたいに不幸な人生になるわ」と、実はワケあって捨てられ、しかも女に生まれなかったことにうっかり涙し、「辛いだろうけど堕ろすことに反対はしない」と答えます。
その一言を聞いたチャーリーは、席を立ち病院を出ます。
このやり取りは男女のものだと思います。はい。
うっかり涙したキトゥンのそりは男性のものであり、瞬時に産むことに決めたチャーリーの判断は女性のものだと思います。
予想どーり、チャーリーは冤罪で一時投獄されたり恋人は密告者として仲間に銃殺されますが、衰弱して流産のおそれもある彼女の面倒を見て添い寝をして元気づけます。
ここらへんは男性特有の包容力だと思います。

 物語における最大の目的である母親との再会は果たされます。
で、その前に母親が暮らす家の前に少年一人。
話しかけると母親の子供であることが判明します。

「あなた、名前は?」

「パトリック」


ふてぶてしいガキがテメーと同じ名前だと知った瞬間のキトゥンの表情は、女でも男でもなく、人としてのもんです。
てか、この演技はキリアン・マーフィーすげーやっつー。

 物語のラストに、チャーリーが定期検診で産婦人科を訪れ、キトゥンも付き添うんですが、そこで種違いの弟パトリックが現れ、母親が妊娠したことを知らされます。
このシーンで一言(これが物語を集約していると思う。)、そして、キトゥンとチャーリー、弟と母親が病院のクロスロードを別々の方向に歩いていくシーンは「実際観てくれ」と。

 この作品は、音楽ファンじゃねーと賛否両論がありそーです。
僕ぁ、ケッコー色々聴いてきたクチだと思ってましたが、効果的に使われてるBGMの半分くれーが知らねーミュージシャンです。
ま、単に日本じゃヒットしなくて、実は1970年代に欧米じゃ有名なしとが多いのかもしらんですが。
僕が知っとるのだけで、ルーベッツ、ハリー・ニルソン、パティ・ペイジ、T.レックスあたりです。
作品のタイトルになった曲を書いたドン・パルトリッジに至っては名前すら知らねーっつー。
ただ、「ええ!?この曲って使い古されてんじゃん!」と思ったのがルーベッツのSugar Baby Loveでして、この曲だけは日本でも有名です。
運が良けりゃ、中古で彼らのオリジナル・アルバム(五作目にあたる『Baby I Know』あたりは傑作。)が手に入りますが、Sugar Baby Loveが有名すぎて輸入盤でも、そりを収録したベストくれーしか手に入りません。
んで、日本だけでも色んなミュージシャンがこの曲をカヴァーしてますから、冒頭のクレジットと同時に始まった瞬間「うわー、ベタベタやん!」と思いました。
感覚としてはCMやらで使い古されたフレディ・マーキュリーのI Was Born To Love Youが流れるよーなもんです。
が、見事に馴染ませてます。しかも、エンド・クレジット前にもリンクさせるよーに再度流れ、「巧い!」と膝を叩きました。
しかし、映画に疎いゆえに面白ぇと思いますね。
この監督、有名ではあるでしょーが、二十世紀末に日本で未成年の凶悪犯罪が立て続けに起こり、運悪くそりを想起させるよーな作品(『ブッチャー・ボーイ』。)を撮っちゃってて日本(倫理的に他国もらしい。)で上映されねー作品や、シリアスかつサスペンスな作品が多いからか本作も話題にならなかったらしいですが、色々と唸らせてくれた作品を撮ってたとは思いませんでした。
僕ぁ真摯な映画ファンじゃねーですが、観といて損はねー作品だと思いましたね。
とまれ、「ああ、この曲か!」なルーベッツのSugar Baby Loveを聴いてみましょーか。

<The Rubettes - Sugar Baby Love(with Breakfast On Pluto)>

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